桜田課長の秘密
因みにそんなシジミが動きだすとはすなわち。
社員にとって最大の恐怖イベント、社内リストラが始まるということ。
噂だとそのやりくちは巧妙で、先ずはターゲットを『管理対策室』と言う名の『追い込み部屋』に異動させる。そこで実態のない単純作業を延々とやらせ、心が折れたところにシジミが登場。ネチネチと責め立て、自主退職をうながすという筋書きである。
「あと1ヶ月で面談でしょう。社員にはなりたいけど、シジミと働くのはキツイなあ」
ルミさんがシャープな顔立ちに似合った短い前髪をもて遊びながら、眉をひそめる。
そういえば彼女はコピーのサイズを間違えて、シジミにこってり絞られたばかりだ。
同情はする。けれど私にとって、シジミの説教と正社員の座なんて秤にかけるまでもない。安定した収入と福利厚生。それらが手に入るなら、シジミのひとりやふたり……いや、ふたりとなるとさすがに面倒だな。
「ねえ、巴ちゃんはどうするの?」
来客用の湯のみを洗い終わった私に、彼女の視線が絡みついた。
「え、なにがですか?」
「なにって面談よ。もしも正社員にしてくれるって言われたら」
「もちろんお受けしますよ」
「ええっ、シジミだよシジミっ! あの陰険ダサメガネといっしょに働くなんて無理じゃ……な……ぃ」
言葉の最中に視線が私を通り過ぎ、給湯室の入り口に張り付いて。それと同時に、自分の背後にどす黒いオーラを感じ取った。
社員にとって最大の恐怖イベント、社内リストラが始まるということ。
噂だとそのやりくちは巧妙で、先ずはターゲットを『管理対策室』と言う名の『追い込み部屋』に異動させる。そこで実態のない単純作業を延々とやらせ、心が折れたところにシジミが登場。ネチネチと責め立て、自主退職をうながすという筋書きである。
「あと1ヶ月で面談でしょう。社員にはなりたいけど、シジミと働くのはキツイなあ」
ルミさんがシャープな顔立ちに似合った短い前髪をもて遊びながら、眉をひそめる。
そういえば彼女はコピーのサイズを間違えて、シジミにこってり絞られたばかりだ。
同情はする。けれど私にとって、シジミの説教と正社員の座なんて秤にかけるまでもない。安定した収入と福利厚生。それらが手に入るなら、シジミのひとりやふたり……いや、ふたりとなるとさすがに面倒だな。
「ねえ、巴ちゃんはどうするの?」
来客用の湯のみを洗い終わった私に、彼女の視線が絡みついた。
「え、なにがですか?」
「なにって面談よ。もしも正社員にしてくれるって言われたら」
「もちろんお受けしますよ」
「ええっ、シジミだよシジミっ! あの陰険ダサメガネといっしょに働くなんて無理じゃ……な……ぃ」
言葉の最中に視線が私を通り過ぎ、給湯室の入り口に張り付いて。それと同時に、自分の背後にどす黒いオーラを感じ取った。