桜田課長の秘密
「巴ちゃんってさ、自分に嫌がらせをしてくる子にまで笑顔だよね。ほんと凄いと思う」

「凄くないです。ただ……亡くなった祖母がいつも言っていたんです。『笑顔でさえいれば、なんとかなる』って」

『そっか』と微笑んだ相田さんの目が、寂しそうに反らされた。

「おばあちゃん……亡くなってたんだ」

「はい、1年前に――あっ!」

しまった。
祖母の看病だと、彼の誘いを断り続けていたんだった。

「ええと、その……違うんです」

「いいよ。なんとなく断る口実なのかなって、分かってたから」

優しく微笑まれると、自分がひどく嫌な女に思えた。

「本当にごめんさいっ!」

「いいって、気にしないで」

「気にします、そしてすごく後悔しています!」

頭を深々と下げる私に、相田さんが思いついたように言う。

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