桜田課長の秘密
貰った鍵をキーケースに仕舞いながら待っていると、廊下から呼ばれる。

「江本さん、両手がふさがっています。開けてください」

言われるままに戸襖を引くと、鼻先に布団の山が現れた。

「未使用ですので、安心して使って下さいね」

あっけに取られる私の前に、手際よく布団が敷かれていく。

肉厚な敷布団。
その上で柔らかそうな掛け布団が、ふわりと波打って着地した。
最後に枕カバーをセットして振り返った課長は、出来上がったばかりの寝床をポンポンと叩く。

「どうぞ、少し休んでください」

「へっ、……寝るんですか?」

かりにも初出勤なワケで。
まだここに来て30分もたっていないワケで。

「そんなこと出来ません」

「どうして……ああ、スーツが皺になるか。早速、これに着替えるといい」

仕事着として用意された白いワンピースを渡される。

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