桜田課長の秘密
どうしよう。
イヤなのに……こんなの絶対イヤなのに。

指先でなぞられる肩甲骨。
舌を這わされる首筋。

「ふっ、あ……」

襲ってくる快感は逃げ場を失い、淫らな息となって吐き出される。

「気持ちいいですか」

「よく……ないっ!」

なけなしの理性が、ささやかな反抗を試みた。

「江本さんは、本当に嘘つきですね」

「え、きゃっ」

フワリと体が浮いた。
いとも簡単に抱え上げられたかと思うと、布団まで運ばれてて、丁寧に横たえられる。

「まあ……それも、そそりますが」

頬を撫でられ、愛おしげに微笑まれると。

まるで愛されているような……
そんな錯覚に囚われた。

こうして彼に組み敷かれた女が数多(あまた)いることは、分かりすぎるほどに分かっている。

それでもこの〝タチの悪い男〟に、身を委ねてしまいたいと思った。

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