桜田課長の秘密

ウソ………噛みつかれてる?

「痛い……ですっ」

抗議の声をあげた私に『さっきの仕返し』と、上目遣いに眉を吊り上げる課長。
その顔がまるでいたずらっ子みたいで、なにも言えなくなった。

心を掴まれそうで顔を反らしたのを、彼は怒りだと勘違いしたのか、

「すみません、傷つけない約束でしたね」

言いながら、先ほど歯を立てた鎖骨に舌を這わせはじめた。

穏やかな舌遣いに、痛みが引いて甘い疼きが湧き上がってくる。
そんな恥ずかしい体の変化を、乱れた吐息が臆面もなく伝えてしまう。

必死にすがりついていた指が、優しく解かれた。

「ひやっ……んっ!」

突然の強い刺激に体が跳ねあがる。
課長の指が、下着を押し上げて胸の先端を引っ掻いたのだ。

鎖骨に這わされていた舌がツウ――と駆け下りて、反対側の突起を捕らえた。

「や……」

触れるか触れないか……
それはまるで、真綿に全身を包まれ、弄ばれているような、経験のない感覚だった。


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