藍色の夜
デートスポットとして人気だったそこに行きたいと誘ったのは私だった。
彼はそのことを知ってか知らずか、二つ返事でOKしてくれて。隣を歩いているとほんの一瞬だけ、恋人になれたような、そんな幻想が浮かんで幸せで。
でも、すぐにそれが幻惑だと気付いた。彼の私じゃなくて、その向こう側を見ているような視線で。
「(ずっと分かってた癖に、なんで今更、こんなに...)」
彼にはずっと好きな人がいた。もうどこにもいない、それでも忘れることができない、そんな人が。