【完結】その口止め料は高すぎますっ
わたしを抱き上げたまま、直斗さんは車寄せに足を進める。濃紺の艶を放つ直斗さんの車のもとへ。

全然気づかなかった、直斗さんいつからここに…

そっと降ろされ、彼に支えられながら助手席に乗り込む。
なめらかに車は通りに出て走り出した。

「足捻ってない? 薬局か病院に寄ったほうがいいかな」と直斗さんが気遣うように口にする。

「だいじょうぶです。擦りむいただけなので」
足首を動かして確認しながら答える。曲げても痛みはない。捻挫の心配はなさそうだ。

そろそろとスカートをめくってみる。予想通りストッキングが派手に破れて、膝に紅い血がにじんでいた。
せっかくのお呼ばれ用のワンピースが汚れないように、見苦しいけどスカートはたくし上げておくことにした。

「とりあえず消毒だな」
ちらりと目を向けて直斗さんがつぶやく。

帰ろう、と彼が言う。「俺たちの家に」

はい、と返事をしながら胸に温かいものが宿り広がってゆく。
その温もりに促されるように直斗さんに訊くことができた。
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