【完結】その口止め料は高すぎますっ
「こ、小原さん…?」
反射的にその名を口にして、あとは言葉が出てこない。
間違いない、うちの会社のデザイン部のトップディレクター、小原直斗さんだ。
端正な面差しに、涼やかな表情を浮かべてこちらを見下ろしている。
動揺に目を見開いたまま固まるわたしに視線を落として、小原さんがうすく笑む。
「メイクイベントのバックステージで、スタッフカードを首にかけて、まさかバイトしてるの?」
わたしの全身にすばやく目を走らせる。掴まれた腕がとかれる気配はなかった。
「ち、違うんです。これにはわけが…」
しどろもどろで口にする。
「商品をトレイに載せていそいそ運んで、これからお会計?」
彼の瞳の奥にのぞく面白がるような色に、ひどく嫌な予感がする。
「いやあのその、親戚の手伝いで」
「スタッフとして? うちの会社、副業禁止だよ」
それはもちろん承知だけど。香帆ちゃんの非常事態で、一生のお願いで…あ、早く商品をお客様のところに持っていかないと。
反射的にその名を口にして、あとは言葉が出てこない。
間違いない、うちの会社のデザイン部のトップディレクター、小原直斗さんだ。
端正な面差しに、涼やかな表情を浮かべてこちらを見下ろしている。
動揺に目を見開いたまま固まるわたしに視線を落として、小原さんがうすく笑む。
「メイクイベントのバックステージで、スタッフカードを首にかけて、まさかバイトしてるの?」
わたしの全身にすばやく目を走らせる。掴まれた腕がとかれる気配はなかった。
「ち、違うんです。これにはわけが…」
しどろもどろで口にする。
「商品をトレイに載せていそいそ運んで、これからお会計?」
彼の瞳の奥にのぞく面白がるような色に、ひどく嫌な予感がする。
「いやあのその、親戚の手伝いで」
「スタッフとして? うちの会社、副業禁止だよ」
それはもちろん承知だけど。香帆ちゃんの非常事態で、一生のお願いで…あ、早く商品をお客様のところに持っていかないと。