【完結】その口止め料は高すぎますっ
彼の寝室でベッドに横たえられて、トクン、トクンと波打つ自分の心音を不思議にはっきり聞いていた。

薄闇のなかで、直斗さんの手がわたしの膝をそっと持ち上げる。
「なるべく傷に障らないようにするつもりだけど———難しいな」
傷のそばに触れるようにキスを落とす。

「だいじょうぶです」と小さく返す。
きっと夢中でそんなこと忘れてしまうだろう。

彼の手がシーツのあいだから背にもぐり、わたしは合わせて体を浮かせる。指がワンピースのファスナーをさぐり当てて、ツゥっと下ろしてゆく。

わたしはただ目を閉じて、彼にすべてを委ねた。

直斗さんは優しく巧みだった。
敏感になった素肌は、触れられるだけで官能のさざ波をおこして、自然と声がもれる。

「花乃…」
「直斗さん」
幾度となく互いの名を呼びながら、求め合う。

愛するひとと肌を合わせてひとつになる歓びを、初めて知った。
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