【完結】その口止め料は高すぎますっ
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「———ずっと好きだった」
直斗さんのささやきを、わたしは彼の腕の中でなかばまどろみながら聞いた。
「うそ…どうして」
たどたどしく問い返す。なんだかすべてが夢の中のできごとのようだ。そういえば始まりは悪夢だと思ってたっけ。
「最初は、製作部に可愛らしい女性がいるなっていう感じだった。メモの字が丁寧で、チェック項目にきちんと付箋が貼ってあったり仕事が行き届いていて、だんだん気になる存在になって」
そんなふうに思ってくれていたなんて、全然知らなかった。トップデザイナーの直斗さんは雲の上の存在で、見上げようとさえしなかった。
「ときどき顔を合わせるうちに、花乃が感性が豊かでセンスがいいことに気がついたんだ。いつもメイクがちょっとずつ違っていて。季節感とか、服の色とか、いろいろ合わせて工夫してるなって。今日はどんなメイクかなって、見るのが楽しみだった」
わたしのささやかなこだわりを、ずっと見守ってくれていたひと。
「やっと捕まえた。もう離さない」
言葉どおりわたしを抱く腕に力がこもる。
「———ずっと好きだった」
直斗さんのささやきを、わたしは彼の腕の中でなかばまどろみながら聞いた。
「うそ…どうして」
たどたどしく問い返す。なんだかすべてが夢の中のできごとのようだ。そういえば始まりは悪夢だと思ってたっけ。
「最初は、製作部に可愛らしい女性がいるなっていう感じだった。メモの字が丁寧で、チェック項目にきちんと付箋が貼ってあったり仕事が行き届いていて、だんだん気になる存在になって」
そんなふうに思ってくれていたなんて、全然知らなかった。トップデザイナーの直斗さんは雲の上の存在で、見上げようとさえしなかった。
「ときどき顔を合わせるうちに、花乃が感性が豊かでセンスがいいことに気がついたんだ。いつもメイクがちょっとずつ違っていて。季節感とか、服の色とか、いろいろ合わせて工夫してるなって。今日はどんなメイクかなって、見るのが楽しみだった」
わたしのささやかなこだわりを、ずっと見守ってくれていたひと。
「やっと捕まえた。もう離さない」
言葉どおりわたしを抱く腕に力がこもる。