【完結】その口止め料は高すぎますっ
「えーと、手術に臨むご両親を安心させるために、わたしが小原さんの婚約者のふりをするってことですか?」
そんな無茶苦茶な。

「そういうことだ。飲み込みが早くて助かる」

向かいの彼はなんとも涼しげな表情だ。正面からあらためて見ると、本当に整った顔立ちをしている。こんな状況でも見とれそうになってしまう。
って、そうじゃなくて…
「無理ですよ、小原さん。婚約者のふりなんて。それにその場はごまかせたとしても、その後どう収拾つけるつもりなんですか?」

「結納とか両家顔合わせとか言われる前に、別れたで押し通そうかと。とりあえず退院まで、結婚を前提にお付き合いしている彼女を演じてほしいんだ」

「じ、事情は分かりましたけど…」
必死で断る方法を探す。

「けど、なに?」

「小原さん、お付き合いされてる方はいらっしゃらないんですか?」
社内の女性人気ナンバーワンだろうという小原直斗さんが。

「いたらこうして取引を持ちかけないよ」
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