【完結】その口止め料は高すぎますっ
棚には本やオブジェ、そして———

「わぁ…」思わずため息がこぼれる。
少しでもメイクやコスメに興味のある女性なら、垂涎もののコレクションが並んでいる。

「Rihanna beautyの多色パレットは最近手に入れた。カラートレンドの傾向も分かるから重宝してる。Jouvaudの単色シャドー、milleのリキッドシャドーも発色がさすがだ。Un Demiのジェルライナーは描き心地がいいしサテンのような艶が出る」

ジェルライナーの一本を手に取ると、デスクに広げられた画用紙に小原さんが筆をすべらせる。
その手の動きに見とれてしまう。

「フィックスブースターで筆を湿らせると、粉のアイシャドウで濃く細いラインも引ける。いろいろ描きかたを試すのも面白い」

描いているのは部屋の中のようだ。天井の高い空間にテーブルや椅子が描かれていく。さっきまで何もなかった紙の上に、空間が広がってゆく様は魔法を見せられているみたいだ。
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