【完結】その口止め料は高すぎますっ
朝食は、トーストにコーヒーという簡単なものだった。
広々としたキッチンに、カフェで見るようなコーヒーマシンが据えられているのにちょっと驚いて。淹れたコーヒーの香りのよさに、もっと驚いた。

「コーヒーお好きなんですか?」

「イタリア留学時代に感化された。いちいちミルで挽くのがめんどくさいから、マシン任せだけど」
テーブルで向かい合って朝食をとりながら、直斗さんが説明してくれた。

「花乃はいつも朝ごはんはどんな感じ?」

「パンに、ミルクティーかヨーグルトっていうパターンが多いです」口をもぐもぐしながら答える。
「おいしそうなパン屋さんを見かけると、つい寄っちゃいます。あ、でも実家の朝ごはんは和食だったから、休日には納豆ご飯とお味噌汁にしたり。懐かしい気持ちになるんです」

とりとめのないわたしのおしゃべりを、直斗さんはふむふむと聞いてくれる。
あれ、カップルっぽいかも、なんてちらっと思う。

「ご実家はどちらだっけ?」
直斗さんが問いを重ねてくる。

「神奈川の川崎です。会社からちょっと遠いので、就職を機に一人暮らしを始めました」
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