【完結】その口止め料は高すぎますっ
「ご両親は反対しなかった?」

「されましたけど、仲のいい従姉妹も東京で一人暮らしをしていて、近くに住むことにしたんです。なにかあったらお互い助け合えるし、ということでしぶしぶ了承してくれました」

その仲のいい従姉妹のピンチを助けようとして、巡りめぐっていまここにいるわけだけど。

「今日のメイクもいいな。使ったのはCucinelli?」

「そうです、お借りしちゃいました」

「よく似合ってる。品があるけどしゃれてる」

「ありがとうございます」
思わずぺこりと頭を下げる。
メイクを褒めてもらえて嬉しくて胸がはずむのは、彼がデザイナーだからだ。と自分に言い聞かせる。
美と造形のプロに認められたことを感謝して、それ以上のことを期待してはいけない。
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