【完結】その口止め料は高すぎますっ
品があるけどしゃれてる、と評してくれた直斗さんの言葉がよみがえって、落ち着きかけていた心がかき乱される。

戸惑った表情を浮かべる、鏡の中の自分と見つめ合う。
誰かを何かを恨むわけじゃないけど、思わずにはいられない。
なんでこんなことになっちゃったんだろう。

昼休みにスマホをチェックしたら、届いていた直斗さんからのメッセージに左胸の奥が小さくバウンドした。

『今日は8時頃に帰れそう。夕飯作ってもらえる?』

『了解しました。苦手な食べ物とか、ありますか?』と返す。

ほどなく『にんじん』と一言返ってきたメッセージに、くすっと笑ってしまった。

「どしたの、なんかあった?」とその様子を、一緒にランチを食べていた同僚の(みどり)に訊かれてしまう。

「あ、なんでもない」と慌ててスマホをしまった。
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