【完結】その口止め料は高すぎますっ
「こういう食事がいちばんだな。子どもの頃、おかずをぱくつきたいんだけど、お味噌汁をすすってご飯をひと口食べてからおかずに箸をつけなさい、って怒られた」

「わたしもおばあちゃんに同じこと言われました」
思わず目を見合わせて小さく笑う。

「あんまり凝ったものは作れないんですけど、こういうものでよければ」

「会食はどうしてもカロリーが高くなるから、こういう食事が助かる」

「会食の機会、多いんですか?」

なんだかんだで週に2回くらい、と彼が視線をめぐらせて口にする。
「夕飯の予定は分かりしだい連絡する。突発的な予定が入ってしまうときもあるけど」

わかりました、とうなずいた。

意外なほど和やかに食事の時間が過ぎていった。

少しずつ互いを知ってゆく。
それは恋愛でも友達付き合いでも変わらない。そして期間限定の契約関係であっても。

キッチンには食洗機も完備してあり、洗い物の手間もほとんどなく便利そのものだった。
これに慣れちゃうと、前の生活に戻れなくなりそうだ。っていつかは戻らなきゃいけないのに。
< 44 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop