【完結】その口止め料は高すぎますっ
食後にお茶を飲みながら直斗さんに、来週末に都内の病院に入院しているお父様のお見舞いに行くことを告げられる。

「ちなみに手術の予定は再来週だ」

「けっこう時間が空くんですね」

そうなんだ、と直斗さんがうなずく。
「俺も専門家じゃないから詳しいことは分からないけど、すぐに命に関わる病状じゃないから。他に病巣がないかの検査とか術後の療養のことも含めて、慎重に決めるらしい」

なるほど。

「ちらっと今度彼女と一緒にお見舞いに行くって言ったらびっくりしてたけど、予定をせっつかれてる」

緊張に胃がきゅっと縮むのを感じる。どう言い繕っても、ひとをだますという事実にも気がとがめた。

わたしの表情の変化をどうとったのか直斗さんが「挨拶程度で、長居するつもりはないから」となだめるように言う。

簡単にご両親のことを話してくれた。
実家は世田谷にあること。お父様はいわゆる商社マンで、五十五歳でいったん定年退職した後、とある会社で役員を務めているという。
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