【完結】その口止め料は高すぎますっ
お母様は専業主婦で、お父様の転勤について一家はパリとチューリッヒで暮らしたことがある。
外国生活で習得した料理やお菓子を、ひとに振る舞うのがお母様の楽しみだとか。

そんな料理上手のお母様がいながら、よくわたしの料理をおいしいと平らげてくれたなぁ、と今さらながら背筋を冷や汗がつたう。

うっすら予想はついたけれど、ただのサラリーマン家庭のわたしと直斗さんとでは育ちが違う。そもそも釣り合わないのだと思い知らされる。
そう言い聞かせて、自分のうちに生れそうになる淡い期待の芽を摘み取ってゆく。

「で、休みなしで悪いけど、今週の土日は花乃の荷物の引越しとデートで埋まりそうだ。デートでなんかやりたいこととかある?」

「ええと、特には」

「そういえば花乃の趣味って?」

「…メイクくらいです」

なるほどと、納得した様子で彼がうなずいて「土曜に引越しで日曜に出かけるか」と彼がつぶやく。
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