【完結】その口止め料は高すぎますっ
傷口はふさがっていない。ふだんはそこから目をそらしているだけだ。

「勝手だよね。彼女のことを『すっぴん見たら全然顔が違った。サギだ』とか言って別れたんだって」
春海が吐き捨てるように言った。

本当に身勝手だ。そんな身勝手な男を好きになって振られて傷ついている自分に、また落ち込んでしまう。別れてもう四年以上たっているのに。

「気をつけたほうがいいよ、花乃」
春海が眉をひそめる。

「なんで?」
ぽかんとしてしまう。

「男ってさ、特に自己中なタイプってなんでも自分にだけ都合のいいように解釈するから。自分が昔傷つけた相手でも、なぜか俺のこと今でも好きだろうって思ってたりするんだよね」

「いや、それはカンベン」
ずしっと気が重くなる。好きなわけじゃないけど、まだ過去を引きずっているのだと思い知らされる。
恋に臆病になったまま、わたしは今かりそめの恋を演じている。
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