【完結】その口止め料は高すぎますっ
それからわたしは新しい恋を探すこともなく、鏡を見てメイクすることにささやかな喜びを見出して、香帆ちゃんの活躍を誇りに日々を送ってきた。

アプローチしてくれるひとがいないこともなかったけど、あいまいな態度でやり過ごして。
好きになったら負け、そう思ってしまったから。

「花乃、今日のチークいい感じだね」
と春海が話題を変える。

「Londのクリームチーク。プチプラだけどツヤっと仕上がるよ。リップにも使えるの」
とたんに口が軽くなる。

「便利だね、それ。そういえばわたし、この間Pas de deuxのマルチパレット買ったんだ」

「あ、わたしも気になってた」

メイクの話が楽しめるのは女友達で、結局男性はそんなところは見ていない。
そう思っていたのに。
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