【完結】その口止め料は高すぎますっ
そして土曜日の早朝、わたしは香帆ちゃんのマンションを訪れた。

「おはよう」

出迎えてくれた香帆ちゃんは、つやつやと顔色がよく、とても病み上がりには見えなかった。

そう言うと、「いつものリキッドファンデに、オイル美容液を一滴と、明るいトーンのファンデをちょっと混ぜて、艶肌をつくるの。チークはA-ffectionの07番ドリームウォーマーで血色を足して、リップは無理に明るい色を使わずに、ピンクベージュで抜け感を出して完成」と解説してくれた。

こんなところにも、メイクテクが遺憾なく発揮されている。

メイク道具を詰め込んだスーツケースをわたしが引いて、二人でタクシーに乗り会場である賀來堂銀座店に向かった。

コスメティックパーティーは、開場から熱気にあふれていた。

予約のお客様一人につき、一時間〜一時間半ほどかけて、肌やメイクの悩みや要望を丁寧に聞きながら、香帆ちゃんがメイクを施してゆく。
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