【完結】その口止め料は高すぎますっ
彼女は会社の関連部署で働いている後輩なんだ、と直斗さんが言葉を添える。

「それはそれは、直斗がいつもご迷惑をかけてごめんなさいね」
お母様が朗らかに口にする。

「いえ、そんな…」

なにせわがままな子だから、と笑みながら続ける。
「花乃さん」と名を確かめるようにわずかに間をおいて「直斗に振り回されて大変でしょう」

どうしよう、否定できない。

余計なこと言うなよ、と憮然とする直斗さんが、むくれた子どもみたいでちょっと可愛いと思ってしまった。

「わざわざ見舞いに来てくれてありがとうございます」

「いえ、押しかけてしまってすみません」
考えてみれば、病身の姿を他人に見られるのは抵抗があるかもしれない。急にそんなことに気づく。
それでも直斗さんのご両親はわたしを受け入れてくれたんだ。

「とんでもない、主人もわたしも楽しみにしてましたの。どんな奇特なお嬢さんかしらって」

これが商社マンの奥様の社交なのか。会話に気配りやさりげないユーモアがちりばめられている。
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