【完結】その口止め料は高すぎますっ
ねえあなた、とお父様のほうに首を振り向ける。

「せっかくのお休みの日に、こんな辛気臭いところに足を運んでいただいて。退院したら、今度はぜひ自宅のほうに遊びにいらしてください」
ゆったりとした調子でお父様が口にする。

その言葉に、ありがとうございます、と恐縮して頭を下げる。
ダメだ、とその一語が頭の中にぽっと浮かんだ。

「こんなパイプ椅子しかないんですけど、かけてください」
お母様がいそいそと勧めてくれる。

「あ、ありがとうございます」

ダメだ、ダメだ…
お母様を中心に和やかな雰囲気で会話をしながら、その言葉がどんどん大きく重くなってゆくのを感じていた。
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