【完結】その口止め料は高すぎますっ
直斗さんご両親はわたしが言うのもおこがましいけど、素晴らしい方達だった。
品があり言葉のはしばしに教養を感じさせながら、取り澄ましたところはまるでない。

もちろんある程度、初対面の相手に自分を取り繕うことはできるだろうけど。
悪意というのは意外とピピピッと電波のように伝わってくるものだ。

直斗さんのご両親に、そんなところはみじんも感じられなかった。
次男に大切な存在ができたことを心から喜び、その相手を諸手を広げて歓迎してくれた。

だからこそ心苦しくて仕方ない。

『これでも直斗は優しいところもあるのよ。子どもの頃、花を摘んで花束を作ってプレゼントしてくれたり。それがなかなか色合いとか考えてあってね。長男からはプレゼントっていえば昆虫ばっかりだったから』
お母様の話に、自然と笑い声が出るくらい会話も弾んだ。

お父様も体調が優れないだろうに、けしてそんなそぶりを見せず、終始こちらを気遣って接してくれた。

あんなにも心優しいふたりを———わたしは欺いている。
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