【完結】その口止め料は高すぎますっ
彼のマンションで暮らすことになったとき、直斗さんは基本的に家の中は自由に出入りして好きに使っていいと言ってくれた。だからこそ、マナーを忘れてはいけないと自分に言い聞かせている。

わたしはほぼ共有スペースのリビングダイニング、キッチン、サニタリー、そして自分に与えられたゲストルームを行き来して暮らしている。
例外は、直斗さんが仕事用に使っている小部屋だ。

画材としてコスメ類が置いてあるので、ほとんど1日一度はその部屋をのぞかせてもらっている。
どれを借りようか、明日のメイクはどうしようかな、そんなことを考えながらコスメとたわむれる時間は、まさに至福のひとときだ。
香帆ちゃんにも見せてあげたいなぁ、と叶わないことをつい思ってしまう。

その日も直斗さんの帰宅を待つ隙間時間に、その部屋を訪れた。

棚にずらりと並ぶコスメは、いつ見ても圧巻だ。
あ、Griffonのチークパレットだ。コスメの雑誌でよく紹介されてるから、使ってみたかったんだよな。これお借りしようかな。
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