【完結】その口止め料は高すぎますっ
ふと違和感を感じて、視線が下の段に吸い寄せられた。
色鉛筆のパレット、だろうか。それ自体は不思議じゃない。ここは直斗さんがデザイン画を描く画材の収納場所だ。

他にも様々な種類の色鉛筆のパレットや、あるいはペン立てに差したペンがあちこちに置かれている。
だけれど、コスメも含めてどれも使用感はあっても、それ自体はわりに新しい物たちだ。

その中にあって、その色鉛筆のパレットはひどく古びていた。フタはあちこち凹み塗装の角ははげて、ところどころ錆まで浮いている。
かといってアンティークというほどの味わいもなく、どこにでも売っていそうな。わたしが子供の頃使っていたのも、こんな色鉛筆だった。

強いていえばパレットの幅がけっこう広い。ということは色が豊富だ。36色だろうか。
わたしが使っていたのは、たしか12色じゃなかったかしら。そう考えると、子どもの身にはなかなかの贅沢品だ。
好奇心にかられて手に取り、パカっとフタを開けた。
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