【完結】その口止め料は高すぎますっ
元彼も新郎側の招待客にいるみたいなので、気まずくて顔を合わせたくないから二次会は参加したくないけど、久しぶりに会う友達とお茶くらいしたいなと…って直斗さんにはどうでもいい話だよね。

デザイナーという職業柄もあるのか、直斗さんは観察力が鋭く細かな変化にもよく気がつく。
そんな彼の目に、友人の結婚式の話をするわたしはどう映ったんだろう。いつもと変わらないように見えているといい。


水曜の夜、直斗さんの帰宅は意外に遅かった。
付き添いをしていただけのはずなのに、どこか疲れた様子でどさりとソファに腰を落とす。

「手術、終わったんですか?」
お茶を出しながら、無難な表現を選んで訊いてみる。

うん、と返ってくる。
「ただ予想していたより、腫瘍が組織を浸潤してしまっていて、腫瘍だけを除去する予定が食道も一部切除して縫合することになって、大幅に時間をオーバーしてしまった」

「そうだったんですね…」

「まあ、無事に成功したから」
自分に言い聞かせるようにうなずきながら口にする。
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