【完結】その口止め料は高すぎますっ
「土曜日、お邪魔してだいじょうぶでしょうか?」
ソファの向かいにかけて問いを投げる。

「うん」と即答だった。
「というか来てほしい。付き添いっていっても、お袋とふたりで病室で待ってるだけだから暇といえば暇で。何度も『また花乃さん連れてきて』って言われて参ったよ」

嬉しいような、申し訳ないような、複雑な心地になる。

ぐっと、直斗さんがお茶を一気に飲み干して大きく息をつく。

「お食事どうしますか? 簡単なものならすぐ…」

いやいい、と首を振る。
「待ってる合間にかるく食べたんだけど、病院ってやっぱりいるだけで消耗するな。食欲も無くなる」

分かる気がする。消毒薬の匂いと病と死の気配が漂う場所にずっといたのだから。

思いついたように「ペリエもらえる?」と彼が言った。
「炭酸水なら喉を通りそうだ」

あ、はい、とすかさずキッチンに向かう。

ペリエは直斗さんと暮らすようになってから、わたしも飲むようになった。
最初は独特の風味と口当たりに違和感があったけど、慣れてくるとガス入りじゃないと物足りなくなるから不思議だ。
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