【完結】その口止め料は高すぎますっ
二人で高揚感に包まれて、帰路についた。疲労感さえ心地よくて、足どりは軽い。

「とりあえず初日は乗り切ったね、花乃」
香帆ちゃんの頬が紅潮しているのは、チークのせいばかりじゃないはず。

「うん、どうなることかと思ったけど」
メイクはひとを幸せにできる。香帆ちゃんがこの仕事にすべてを注ぐ気持ちが、少しだけわかった。

「明日もよろしくね、花乃」

「うん!」

翌日も、活気と興奮がうずまく会場で、香帆ちゃんのアシスタントを務めた。

香帆ちゃんに渡された伝票を手にバックヤードに入る。
昨日にも増して慌ただしく、人や物が行き交っている。

著名なメイクアップアーティストのメイクショーや人気モデルを迎えてのトークイベントなども行われているから、マスコミ関係とおぼしき人たちも目についた。
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