【完結】その口止め料は高すぎますっ
余興やお色直しでは大いに盛り上がり、花嫁のスピーチでは一転してしっとりと。莉子と坂本先輩の人柄そのままの温かい雰囲気の式だった。

式が終了して、新郎新婦が招待客にお見送りする列に、わたしたちも並んだ。莉子に祝福の言葉をかけて坂本先輩に挨拶をして、プチギフトを受け取って。
春海と詩織と式場の外に出る。

式場は大通りから入ったところにあるけれど、ひとが集まる場所だからだろう。道幅は広く車寄せもたっぷりとられている。

「いい式だったね。特にあの、子どもの頃莉子のお母さんが大きな病気をしてたって、知らなかった」
詩織がしみじみと口にする。

「だから莉子って、あんなに思いやりがあるんだね」

思い出すとまた涙腺が刺激される。付き合いが長くても、知らなかった一面が垣間見れたりするのも結婚式のいいところだ。

「詩織、スピーチお疲れさま。すっごく良かったよ」
春海が声をかける。

「いやー、スピーチ終わるまで、あんまり記憶がないや。せっかくの料理も味がしなくって」
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