幼なじみの彼とわたし
心の中には理由が思い浮かぶが、今の俺にはそんなこと言えるはずもなく。


「亜衣だから、かな?」


この言葉につきるんだけど、これじゃ亜衣の質問に対する答えにはなってないよな。


隣を見ると、亜衣の目から涙が一粒、また一粒と流れていてさらにびっくりする。
俺、泣かせるようなこと言ったか?
普段はあまり動じない性格だと思っていたが、思い違いだったようだ。
どうすればいいかわからず、あたふたしてしまう。


「大丈夫。落ち着くまでこうしてて」

頭より体のほうが先に動きだしたようだ。


亜衣との物理的な距離を縮め、俺の肩に顔を埋めさせた。
ここでならいくらでも泣いていいよ、の思いを込めて。


背中に手を回してみると、亜衣の小ささがよくわかる。
この手で守ってやりたいな。


しばらくすると泣いている気配もなくなり、亜衣の体を俺から離してみる。


「ごめんね」と言いつつも、体に力が入っていないみたいだ。
泣き疲れた?
このまま寝ようとしているのか?


……!


少し様子を見ていると、亜衣は目を閉じたまままた俺にもたれかかってきた。
さっきまで、あれほど胸を貸してやってたのに、亜衣の方から来ると一気に心臓がはねあがる。

本人が意識的にしているとは思えないが。


そうこうしていると、今度は俺の首に腕をまわしてきた。
近い…、密着だ。
亜衣、こんなこと、どこで教えてもらったんだ?
俺を試してるとしか思えないんだけど。


…って本当に寝てるんだよな。。
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