幼なじみの彼とわたし
今度こそ完全に体重を預けてきた亜衣。
寝てしまったみたいだ。
ちょっと揺すってみても名前を呼んでみても反応がない。


しばらくは同じ体勢で亜衣の体重を受け止めていたが、涙で濡れた睫毛、僅かにあいた口、規則正しく聞こえる寝息、そして、体に感じる亜衣の体重と体温。


「…ヤバいな」


ソファに横たわらせて帰ることにした。
着替えて、玄関に置いてあった鍵で鍵を閉め、ドアについている郵便受けから鍵を中に入れる。
そして、そのことを亜衣にLINEする。


亜衣のアパートから俺のアパートまで徒歩で10分もかからない。
夜道をひとり歩く。

10 月になり夜は少し冷え込むようになった。
冷たい風が気持ちいいな、人恋しい季節って本当だよな、なんて思いながらゆっくりと自分の部屋へと向かう。

それにしても。
亜衣のあんな姿、初めて見たかも。
小さい頃はよく泣いていたけど、就職してからあんなに感情が溢れている亜衣は見たことがない。

失恋した。
この一言がこんなにも苦しいとは。
俺は幼なじみどまりなのか?
もう手遅れなのか?

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