幼なじみの彼とわたし
「へぇ、どんなかんじで?」


どんなかんじって?
ふたりとも興味あるのか、にたっと笑いながら、テーブルに両肘をついて前のめりになっている。


「どんなって。こんなかんじにわたしの肩に手をのせて…」

と自分の両腕を前に伸ばす。


「で、『全力で落としにいくから』『だから俺のことしっかり見てて』って」


あのとき遥ちゃんがしてくれたのを忠実に再現すべく、真剣な表情と優しめの表情と、声も少し変えてみる。

やっぱりやるんじゃなかった。
恥ずかしい、しかない。
顔が赤くなってるのを実感して、手をうちわがわりにパタパタさせて微風ながら風を作る。


「へぇー、言ってんじゃん、遥平くん。で、亜衣紗は?」

「え?わたし?がんばってねって」

「えっ?」

息ぴったりなくらい同時だ。


「だって、俺のことしっかり見ててってことは、遥ちゃんのこと応援してってことでしょ?」

「「はぁーー?」」


あ、ハモった。
気が合うんだな、ふたり。

じゃなくて。
千尋は頭かかえてるし、森田さんは一気に背もたれに体重を預けている。


「だから、凹んだ心にムチうって、それだけ言うのでも精一杯だったのに」


視線が痛くてぶつふつと言い訳をしてしまう。


「「はぁぁ」」


またハモってる。
何かため息が出るようなこと言った?


「あの…?」

「いや、ごめん。あまりにもなんか…。ねぇ?」
「そうだな。なんかなぁ」


ふたりで完結してるみたいだけど、わたしはその“なんか…”のあとを聞きたい。
千尋は、大きく息をはいたあと話し始める。


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