幼なじみの彼とわたし
「ねぇ、亜衣紗。亜衣紗は知らないかもしれないけど、遥平くん、かなりモテるのよ、昔から」

「知ってるよ」


そんなこと随分前から知ってる。
あの見た目だもん。
性格知らなくても好きになる要素が盛りだくさんだ。
学生時代もまわりの子は騒いでたし、仲介役みたいなのも頼まれたことは一度や二度ではない。


「亜衣紗が知ってるのは半分にも満たないと思うよ。あの整った顔面にちゃんと身長もあるし。でも、それをいつもバッサリ振ってたの。知ってるでしょ?亜衣紗の前ではよく笑ってたけど、他の子の前では凍るくらいクールなこと」

「…うん」


いずみんも言ってた、『クールでポーカーフェイス』がみんなが持つイメージだと思う。
森田さんとは対極って言っていいかも。


「そんな遥平くんが、誰かにペースをあわせてゆっくり歩くのも、あんなにふわっと王子さまみたいに笑うのも。誰かさんのためだけっていうのはわかってる?」


え?

それじゃまるでわたしが特別みたいな言い方じゃない。


でもーーー。


「ちょっと待って。わたしだけじゃないよ。千尋にも笑ってるでしょ?ほら、歩くのだって…」

千尋にもふわっと笑ってるし、歩くスピードだって。
だいたい、遥ちゃんは千尋が好きなんだから。


「はぁぁぁ?」


これ、ジト目って言うんだっけ?
違うかな。
とりあえず、白い視線がこちらに向かっている。


「…だって、そうでしょ?」

わたしが知っている限りでは、千尋の前でも王子さまキャラだと思う。
好きな人には当たり前か。
わたしだけじゃない。

< 136 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop