幼なじみの彼とわたし
「あ、これ美味しそう」

レジ前にあったスイーツ2つを買って、また家の方に歩き始める。
街灯があるとはいえ、路地を一本入ると一気に暗くなる。

少し歩くと向こうから体格のよさそうな男性が近づいてくるのがわかった。


なんか怖いな。
直感でそう思った。
関わらないように、と距離をとろうとするのに、その男性はまっすぐこちらへ歩いてくる。


やだ!
どうしよう!!


近くで見ると、その男性は全身黒づくめだ。
服、スニーカー、キャップ、マスク…全部黒。
この人が遥ちゃんの言ってた変質者?
怖さで全身がドクドクいっているのがわかる。


足を止めると、その男性は目の前まで来てマスクをとって話しかけてくる。
相手は大柄だから見上げないとうまく顔は見えないけどそんな勇気はない。


「高森さん、こんばんは。偶然ですね。家この近くですか?」


わたしのこと知ってる?
声も聞いたことある気がする。
顔を見ると佐原くんだ。
なんだ。
知っている顔で心からホッとする。


「もう、誰かと思ったじゃない。うん、そうなの。佐原くんも?」

「へぇ、家どの辺ですか?あのアパートとか?」


わたしの質問には答えず、ぐいぐいと質問してくる。
佐原くんの指さした先にはまさしくわたしが住んでいるアパート。


「あ、うん、そうだけど」

「へぇー。そう言えば、さっきコンビニに入る前に、男の人に車で送ってもらってましたよね?あれ誰ですか?彼氏とか?顔見えなかったんですよねー」


は?
送ってくれたのは遥ちゃんだけど。
コンビニに入る前って…、そんなに前からいたの?
家の前で降りたのを見て、コンビニに入るのも見てたってこと?
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