幼なじみの彼とわたし
電話を切ったあと聞いてみると、「何でもない」と教えてくれない。
気になるから、今度千尋に会ったら聞いてみよっかな。


この週末は恋人らしく過ごすのかなぁと思ったけど、今までとほとんどかわらない週末。
でも、気持ちが通じてるっていうだけでニヤけてきちゃう、そんな週末だった。


月曜日、会社に行くと、目の前には佐原くん。

遥ちゃんと両想いだとわかって浮かれていたけど、その前に彼には怖い目にあわされてたんだった。


でも。
あの怖い思いをしたから、告白ができたんだし…と思うと、何も言えなくなる。


「佐原くん?」

「あの…」

なかなか言葉が続かないようだ。


「わたし、本当に怖かったんだから!!」

わざとらしく怒っている風を装って強めに言ってみる。


「高森さん、本当にすみませんでした!」

勢いよく体を直角に折りまげている。

「あのあと冷静になって、なんてことをしてしまったんだって…」


その声や姿から反省してくれているのが伝わってくる。


「もういいよ」と声をかけると、彼はまた勢いよく顔をあげた。
目が点、というか驚いたようだ。


ん?


「いや、そんなにあっさり許してもらえるとは思ってなくて…」

でも、今は幸せすぎて怒る気分にもなれないし。


「うん、でも、本当にもういいから。それよりちゃんと謝れてすごかったね」

「は?」


ポカンとした表情の佐原くんが目に入る。
謝るのってなかなかエネルギーいるし。


「勇気いったでしょ、謝るの。もう気にしないで」

「…すみませんでした。ありがとうございます」


もう一度深々とお辞儀をしてから去っていった。
まぁ一件落着?かな。
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