幼なじみの彼とわたし
懐かしい夢。
あれは中学校の卒業式の日。

中学で一番仲のよかった千尋と帰ろうとしていたら。

「亜衣、今帰り?一緒に帰ろ?」

帰りかけのわたしたちに声をかけてくれたのは遥ちゃん。

遥ちゃんはわたしのことを『あい』と呼ぶ。


「うん。最後だし3人で帰ろっか」

千尋をちらっと見ると、急に「あ、お母さんに迎えに来てもらうことになってたの忘れてた。ごめんね、またね」と手を振りながら違う方向に行ってしまった。


「え?あ、うん、またね」

急だなぁと思いながら手を振りかえして見送った。


遥ちゃんの家はわたしの家からよく見える程近い。
中学校三年間、毎日ではないけれど時間があえば一緒に帰るというかんじだった。
でも、それも今日が最後だなぁと思うとしみじみしてくる。


「あぁ、なんかごめんな。俺、親友との中学最後の下校、邪魔した?」

「邪魔って。千尋、お母さんと帰るって言ってたじゃない。遥ちゃんもだけど千尋と高校も一緒だし。遥ちゃんがいなかったら、中学最後の下校が一人ぼっちになってたから、むしろ遥ちゃんに感謝だよ」

「なら、よかったけど」


二人して通い慣れた道を歩いて帰る。


ぱっと遥ちゃんを見ると、制服のボタンはもちろん、名札もネクタイもいろんなものがなくなっていてとてもシンプルな格好をしていた。

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