幼なじみの彼とわたし
車を置いてから、徒歩10分もかからない距離を歩いて向かうと、亜衣のアパートの近くで女の人が男に迫られているのがわかった。


「何してるんですか!?」

走って近寄ると男は走って逃げていく。
今はその男よりこの女性だ。
女性のもとに駆け寄ると、なんとその女性は亜衣だった。


俺、家の前でおろしたよな?

そばにコンビニの袋が落ちているのが目に入り、コンビニに寄ったことは把握したが。


「大丈夫?立てる?」

亜衣は座り込んでしまって、体も震えている。
よほどこわかったんだろう。

玄関の鍵をあけるのも、パンプスやコートを脱ぐのも手伝わないとできないほど放心している。


何もされてないかどうか聞くと、震えているにもかかわらず「大丈夫」と強がっている。
作り笑いもなかなかのひどさなのに、弱音を吐かないのは昔から。
少しは弱いところも見せてほしい。


「無理しないの。こわかっただろ?ごめんな、ちゃんと部屋まで送ればよかった。一人にしなきゃよかった。俺のせいだな。亜衣、本当にごめん」


たまたまケガとかがなかったからよかったが、変質者が出るって知ってたのに、守れなかったことが悔しい。
部屋に入るまで見送るとか、コンビニまで一緒に行くとか。
もっと早く亜衣のアパートに来るとか。


「…こわかった」

これが亜衣の本音だろう。
ごめん、本当にごめん。


『泣いてたら、ぎゅーってして』


前、失恋したと泣いていたときにそう言っていたのを思いだし、泣きじゃくる亜衣を膝の上に乗せ、抱き締めるように腕を回し抱き締める。
< 150 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop