幼なじみの彼とわたし
亜衣がこっちを見てくるけど、笑顔にする余裕なんてない。
ただ安心させられるよう抱き締めるだけだ。
すると、亜衣も俺の首に腕を回してきた。
少しは安心感持ってくれただろうか。


しばらくして、亜衣が喋り出す。


「もう大丈夫だから。ありがとう。でね、このままで聞いてくれる?」

「ん?何?」


何の話だろうか。


「あのね。・・・・・・好き…なの」


今「好き」って言った?
背中を撫でるように動かしていた手が止まる。
何が好きって?
何の話してたっけ?
聞き間違い?


「………ごめん、ちょっと…」


今度はきちんと聞きとるために、亜衣の体を引き離す。


「うん、ごめんね、わかってたから。ごめんね」


あ、俺がごめんって言ったからか。
否定した訳じゃないんだ。


「いや、そうじゃなくて。よく聞こえなかった…というか、聞き間違えたというか。だから、もう1回言ってくれる?」

亜衣は、え?という表情だ。
今度はしっかり聞き取るために、亜衣をじっと見る。


「わたし、遥ちゃんが好き。幼馴染みとしてじゃなくて。男の人として…」

「……え?」


やっぱり好きだって、俺のこと男として好きだって言ったよな?
亜衣はそんな素振りなかったし、幼馴染みと思われていると思ってたから信じられなくて言葉が出てこない。


でも、嬉しさがぶわっと溢れてきて、思わず目の前の亜衣をぎゅっと抱き締めた。
しばらく抱き締めていると俺は何も言ってなかったことに気づく。
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