幼なじみの彼とわたし
「ごめん、やっぱり顔が見たい」

また体を引き剥がして顔を覗きこむ。
頬を赤くして泣きそうな顔の亜衣が目に入る。

「本当に?」と聞くと俯いたまま頷く。


「ヤバい、すっげぇ嬉しい!!」

そう言うとまた亜衣を抱き締めた。


「亜衣。俺もずっと好きだったんだ。たぶん、亜衣よりもずっと前から」


俺がいつから亜衣のこと好きだと思ってんの?
もう20年くらいは好きだ。
まぁ、亜衣が気持ちを伝えてくれなかったら、俺はまだ伝えれてなかっただろうなと思うくらいのヘタレだけど。


すると亜衣はへんなことを聞いてくる。


「でも…、…遥ちゃん…、好きな…人…が…ひっく、いる…って」

「うん」

亜衣のことだけど。
今伝えたよな。


「じゃあ、ひっく…ダメじゃん、こんなことしてたらぁぁー」


はぁ?


「亜衣。俺の話聞いてた?ついさっき、亜衣がずっと好きだったって言ったところなんだけど」

つい白い視線を送ってしまう。


「…えっ、好きな人ってわたしだったの?…でもいずみん…」


そういうことか。
いずみとすれば、亜衣を煽ろうとしての行動だろうけど。


「いずみは俺の気持ち知ってたからな。俺は亜衣が『失恋した』って言ったのを聞いて、俺が失恋したと思ったけど」


あの亜衣の大号泣の日のことは、できれば思い出したくもない。
胸をえぐられるような気分だった。

そう言うと、亜衣はふふふ、と笑い始めた。


「いずみん『意地悪してごめんね』『絶対気持ち伝えるのよ』って言ってた。そういうことだったんだね。意味わからなくて、ただひたすら落ち込んでた」

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