幼なじみの彼とわたし
方向が全然違うし、乗る電車だって違うから申し訳なさすぎる。


「じゃあ、タクシーで帰るから、ね?」

「じゃあ、タクシーで送るね」


何でそうなる。


「えっと、だから…」

「お願い。遥平との約束だからさ。もし万が一亜衣紗ちゃんに何かあったら、俺、後悔してもしきれないし、遥平に殺されるから、ね?」

「そんな大袈裟な」


森田さん、優しいのに譲らないとこあるんだね。
このままじゃずっと帰れそうにないから、申し訳ないけど送ってもらうことに。
クリスマスプレゼントなどで何かと出費のあったこの時期。
電車で送ってもらうことにした。


結局、最寄り駅からアパートまでも送ってくれて、「亜衣紗ちゃんがエントランス入るまで」とエントランスの前まで送ってくれた。
なんて人だ。
千尋の相手が森田さんでほんとよかった。


その日。
遥ちゃんから何度か着信があったけど、話をする気にならなかったわたしは、スマホの電源を切って寝てしまった。


翌日珍しく寝坊してしまい、慌ただしく仕事に向かう。
何とか間に合ったけど、髪型や服装、オーラからもバタバタ感漂う出社になってしまった。

少し落ち着いて来たころ。


「高森さん?よかった。連絡とれないから焦った」


と遥ちゃんがわたしの部署までやってきた。
仕事中だから、“高森さん”と呼んでくる。
これはこれで、ドキッとする。


「スマホ、電源きってるし」とぶつぶつ言っている。
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