幼なじみの彼とわたし
少し残業をしたあと帰り支度をする。

あれから、スマホの電源を入れていたので、遥ちゃんからの『一時間ほど残業したら帰れそう』というメッセージを受信していた。

なんだ、忙しいからクリスマスまで会えないって言ってたのに、帰ろうと思えば早く帰れるんじゃない。
ぶつぶつと文句が出てくる。


建物を出て向かいにあるカフェで待っていると、急いできた様子の遥ちゃんがやってきた。


帰るよ、と駅まで歩き始める。
誘ってくれたのに、遥ちゃんは何も喋らない。
わたしから話せばいいんだろうけど、ネガティブなことを言われるのが怖くてなかなか話せない。
無言で電車にのり、無言で最寄り駅に降りる。
そこから、わたしのアパートまで歩き始めたところでやっと遥ちゃんが話し始めた。


「昨日はごめん」

「…何が?」

ごめん、だけじゃわからないよ。
思ったより不機嫌そうな声になってしまった気がする。


「悠希から何か聞いた?」

森田さんから?
何も聞いてない、と思う。
何のことかわからないけど。
首を横にふる。


「そっか。昨日、あれから電話で悠希に言われてさ。…前、亜衣がいずみと約束があるって言ってた日。俺のこと見たんだって?」

あの、ショートカットの背が高めの女の人と歩いてたときね。


「うん。人事の一年目の女の子なんでしょ?いずみんが言ってた」

「あ、うん、そうなんだけど。ごめん、俺、ちょっと言ってなくて。」


なんだろう。
次の言葉を聞くのが怖い。。


「いとこなんだ。同じ会社の後輩でもあるんだけど、その前にいとこ。父親の妹のこども」


へぇー、いとこなんだ。
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