幼なじみの彼とわたし
「ごめん、ここからはひとりで帰るね。今日は一緒に帰ってくれてありがとう」


それだけ言うと、部屋まで走って帰る。

「ちょっと、亜衣…!」という声が聞こえてくるけど、もう知らない!!
今できる全速力で走って帰る。



振り返ってはいないけど、遥ちゃんは追いかけては来ていない。
大人になってからこんなに走るとは思ってなかったな、なんて思いつつアパートに向かう。
涙が出ているのかな、視界がにじんでいる。

走って帰ってきた勢いのまま、玄関のドアを開け靴を脱ぎベッドにダイブする。
信じてはいるんだけど。
わかってはいるんだけど。
わたしにも言えない何かがあるんだろうって。
だけど。
疑いたくはないけど疑ってしまう。


この間までただの幼なじみだと思ってて。
遥ちゃんが何をしようとそれほど気になってはなかったと思うんだけどな。
ちょっと会えなくても平気だったし。

それが想いが通じた瞬間に欲張りになってしまった気がする。

わたしだけを見ててほしいし、他の女の人を見ててほしくなんかない。
一気に欲張りでワガママで醜い女になってしまった気がする。

そんな自分に嫌気がさしてくる。


「もうやだ…」

もう何も考えたくない。

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