幼なじみの彼とわたし
『これからタクシーで部屋まで送り届けるから』
『そしたら電話する』


どうしようか悩んだけど、とりあえず森田からの電話を待とうか。
様子も聞いてみたいし。


しばらくして、森田から電話がかかってきた。


「今日はありがとう。今送り届けたから」


第一声はお礼の言葉。


「というか、亜衣紗ちゃん。いとこは男で、それとは別に同じ会社の一年目の女の子と一緒にいるって勘違いしてるぞ?」

「あぁ」


「いとこと約束してる」と聞いていた日に女の人とふたりで歩いているのを見かけたこと。
職場でも年下の彼女がいると噂になっていること。

悠希は亜衣から聞いたことを教えてくれる。
さくらと噂になっているとは知らなかった。
あの日ふたりでいるところを見られたことも。


その時に聞いてくれればよかったのに。
って、そんなことする亜衣じゃないか。
その前に、勘違いさせるようなことをした俺が悪い。



「亜衣紗ちゃん、泣いてたよ?さっきも女の人が電話に出たって。喜ばせたい気持ちはわかるけどさ。それが泣かせる原因になったら元も子もないだろ?」


正論を突きつけられる。
悠希の言う通りだ。


「そうだな、悪かった」

「それ、俺に言う言葉じゃないし。本人に言いなよ。あと、言える範囲でいいから説明してあげたら?」

「そうだな」

「あとさ、最近会えてないのもけっこうきてるみたい」


まだ付き合いの浅い俺に厳しく言ってくれる悠希。
この前飲んだ時にも思ったけどいいヤツだ。


「ありがとな」

「いや、俺はただ亜衣紗ちゃんから聞いたことを伝えただけだから。あとは自分でなんとかしろよ?」

「あぁ。ありがとう」

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