幼なじみの彼とわたし
「昨日はごめん」

「…何が?」


不機嫌そうな声が返ってきた。
やっぱり怒ってる?
亜衣が怒るなんて、保育園のころ以来じゃないか?
って、そんなことを遡っている場合ではなくて。


「悠希から何か聞いた?」

悠希が何か話したかと思ったけど、悠希は人のことを勝手に話すようなヤツじゃないけど。


「そっか。昨日、あれから電話で悠希に言われてさ。…前、亜衣がいずみと約束があるって言ってた日。俺のこと見たんだって?」

「うん。人事の一年目の女の子なんでしょ?いずみんが言ってた」

いずみがさくらを知ってたのか。


「あ、うん、そうなんだけど。ごめん、俺、ちょっと言ってなくて。」

「何を?」


心配そうな顔。
その顔もヤバイな。


「いとこなんだ。同じ会社の後輩でもあるんだけど、その前にいとこ。父親の妹のこども」


ビックリしたような納得したような何かに思い当たったような。
ころころと表情がかわる。


「ごめん、いとこって勝手に男の人だと思ってた。で、あの日は人事の一年目の子とデートでもしてるのかと思った。そのあとクリスマスまで会えないって言うし…」


まぁ、さくらがいとこだということも、一緒の職場ということもは言ってなかったしな。


「まぁそうだよな、ごめん、勘違いさせて」

「ううん、わたしこそごめんね」


亜衣が謝ることないんだけどな、と思いつつ首を小さく横にふる。
あとは、昨日のことを言える範囲で説明しないと。
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