幼なじみの彼とわたし
以前亜衣に声をかけた男と背格好が似ているような気がして、気がつくと追いかけていた。
途中で、相手は大柄だし揉み合いになったら負けるだろうな、なんていう思いも出てきたが、これ以上亜衣の部屋の回りをうろつかれるほうが困る。


「おい、待てって!」

なんとか追いついて服を引っ張った瞬間にふたりで転けてしまった。


…いってぇ。


地面とぶつかった膝をさすりながら大柄男を見てみると、息があがったまま地面に寝転んでいる。


「大丈夫か?」

俺がそう言うと、大柄男はパッと起きて土下座スタイルになった。


「ごめんなさい!本当にごめんなさい!でも、これは違うんです!」


意味がわからない。
何が違うんだ?
とりあえず、顔をあげさせてその顔を見て驚いた。

佐原とかいう、亜衣の後輩だ。


「佐原くん?家はこの近く?…だったら逃げたりはしないはずだけど」


彼はじっと地面を見つめている。


「ちょっと話をしよう」


佐原を立たせると、路地を出た大通りに出たところにあるファミレスに連れていく。
ふたりで食べ物を注文したあと話を聞くことに。


「で?なんであの辺りにいたんだ?それに、前、亜衣に詰めよっていたのも君?」

彼のことは顔と名前が一致する程度で、どんなヤツかは知らないけど、あまり悪い印象はない。

「すみませんでした。あの…、高森さん、何も言ってませんでした?」

は?
言ってなかったって?
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