幼なじみの彼とわたし
寝込んでるなら家にいるはず。
そう思って定時で帰れるよう急いで仕事を終わらせる。

熱って言ってたっけ?
途中ドラッグストアでいろいろ必要なものを買って、そのまま遥ちゃんの部屋に向かい、ためらいながらチャイムのボタンを鳴らす。


「鍵空いてるから入って」


あれ?
思ったほどしんどそうではない?
いつも通りの声のような気がした。


「おじゃましまーす。入るねー」


ドアを開け、大きめの声で言いながらパンプスを脱いで中に入る。
遥ちゃんはよくうちに来るけど、わたしがここに来るのはなんだかんだで久しぶりかも。

と言うか。
玄関開けた瞬間から思ったけど。


何このにおい。


「どうしたの、これ!!」


目の前のテーブルの上には手作りであろう料理たち。
まず目に入るのがローストチキン。
で、クリスマスリースのように盛り付けられたサラダ。
ビーフシチューに、バケット。
あと、なんだろう、オムライスかな。
薄焼き卵が四角く何かをくるんだようになっていて、ケチャップでプレゼントみたいにリボンが書いてある。
ワイングラスも出してある。


なんで?
調子悪くて帰ったんじゃないの?


遥ちゃんはわたしの顔を見て笑っている。


「亜衣、メリークリスマス。俺が作ったんだ。一緒に食べてくれる?」


え?
遥ちゃん、料理…。
今度はびっくりしすぎて声も出ないし体も動かない。


「…ダメかな?まだ怒ってる?」


今度は心配そうな顔。
いや、そうじゃなくて。
ぶるぶると首を左右にふる。
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