幼なじみの彼とわたし
「俺、料理全然ダメじゃん?だから、ここ何週間かさくらに教えてもらってたんだ。亜衣をビックリさせたくて、そのことも内緒にしてた。でもごめん、そのせいで嫌な思いさせた」


自分の頭をくしゃくしゃとかき乱しながら下を向いてしまう。
状況を理解してくれたらしい亜衣は、電話やLINEをスルーしたことを謝ってくれて、サプライズは大成功だと言ってくれた。


「遥ちゃんのこと、もっともーっと好きになった」とも。

涙を流す亜衣を見て、思わず抱き締めた。


俺と比べるとずいぶん小さな体だから、すっぽり腕の中におさまってしまう。
でも、俺にとってはとても大きな存在だ。


「せっかく作ったから食べよう。食べてくれるでしょ?」

あたたかいうちに食べてもらいたい。


亜衣の手料理の方が何倍も美味しいに決まってるのに、亜衣は「おいしい」を繰り返しながら、たくさん食べてくれたのが本当に嬉しかった。


「遥ちゃん、ごちそうさま。どれもとってもおいしかった」


この言葉がこんなに照れくさいなんて。


当たり前のように片付けをしてくれる亜衣の後ろ姿をただただ眺めていると、増えたキッチン用品に気づいたみたい。


「あぁ、それね。さくらに付き合ってもらって揃えたんだ。たぶん、亜衣が見た、っていうあの日」


そんな説明をしていると。


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