幼なじみの彼とわたし
さっきワインを飲んだから?
それとも恋人として遥ちゃんにお祝いしてもらえたから?


タクシーの運転手さんがいるとわかっているのに本音が出てしまう。
顔もでろでろにニヤけてしまってるに違いない。


なのに、遥ちゃんは「うん」だけ言って、なんか素っ気ない。


温度差がある?

調子に乗りすぎて機嫌損ねちゃったかな、なんて思いつつタクシーに揺られていると、すぐ遥ちゃんのアパートについた。
タクシーを降りて部屋まで行くのも、いつもより歩くスピードが早い気がするのは気のせい?


慌ててついていくと、部屋の中に入るなり、遥ちゃんの顔が近づいてきた。


キスだ。


啄むようなキスだったのがすぐに深くなる。
噛みつくような、それでいてあたたかい。
とても心地よくて気持ちよくて。
唾液が混ざりあって、どちらのものかなんてもうわからない。

だんだん荒くなっていく二人の息づかい。
もう脚も腰も力が入らなくなってきて、遥ちゃんが着ているコートにしがみつく。


「もう…、ムリ………」


遥ちゃんは、抱き抱えるようにしっかりと支えてくれて、名残惜しそうにちゅっと音をたててキスをしたあと唇をはなした。


「ごめん、がっつきすぎた」


わたしの濡れた唇を右手の親指でぬぐったあと、遥ちゃんはわたしの手を引いて中に入っていく。

そして、ソファに座るのかと思いきや、座ったのはわたしだけで、背もたれに両手をついて上から覆い被さるように遥ちゃんが見下ろしている。
< 213 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop