幼なじみの彼とわたし
「亜衣」


軽くちゅっと音をたてて唇が離れる。
さっきのキスと全然違う触れるだけのキス。
優しく微笑む遥ちゃんにまた胸がきゅんとしてしまう。


「遥ちゃん、大好き」


ゆっくりと彼の首に手をまわす。
またキスしてくれるかな、なんて思ってたのに。
全然キスが降ってこない。


「亜衣、その顔ヤバイから。期待してるところ悪いんだけど、その前に話があるんだ」


なんだろう、話って。


遥ちゃんの顔からはとてつもない勢いで微笑みが引っ込んでいき、ソファに覆い被さる体勢からソファの前に両膝をついて座る体勢にかわっている。
真顔に戻り少し俯いている遥ちゃんからは、朗報なのか悲報なのか読み取りづらい。
むしろ、ひきつり気味というか、話があると言った割にはなかなか話が始まらない。


「遥…ちゃん…?」

あんなに幸せだったのに、急に不安が襲ってくる。
ついさっきまであんなキスをしていたのに。
沈黙が続くということは…。
何か隠し事してる?


すぐに思い当たることはないんだけど。
もしかして、わたし、彼女にするには思ってたのと違った…!?
幼馴染みがベストの関係だったの?
さっきのはお別れのキス?
パニックになりかけの頭で今日の出来事を急ピッチで思い返してみる。

わたしは何回か好きだって伝えたけど。
そういえば、遥ちゃんからは好きどころか、それらしい言葉もなかったような。。。


…え?…そういう…こと…?


だんだん体が冷えてきて心臓だけがヒートアップしてくるのがわかる。

< 214 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop